スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ロシアの新しい戦争「ambiguous warfare」

BlLIURFCcAAGGMl.jpg

Доброго вечора!

教祖です。


一つ前のエントリで書いた、英国下院、防衛委員会の報告書の原文が入手できましたので、それについて前回よりもより突っ込んだことを書いてみます。

まず、本文です。

House of Commons Defence Committee Towards the next
Defence and Security Review: Part Two—NATO

http://www.publications.parliament.uk/pa/cm201415/cmselect/cmdfence/358/358.pdf

ロシアの新しい戦争について、この文章では「ambiguous warfare」という用語を用いており、今後も使用されると思われます。

この報告書ではロシアが今までに行ったambiguous warfareにおいて行われた5つのタイプの戦争を挙げています。

1.cyber attack
2. information operation
3. psychological operation
4. economic attack
5. proxy attack

この中で説明する必要のあるのは4.と5.でしょうか。経済的攻撃、つまり経済制裁はロシアがグルジアやモルドヴァなどに行っていることで、これは西側も頻繁にしていることであり、ambiguous warfareの手段の一つとしてカウントする事をつい忘れてしまいがちです。

5.は公にはロシア政府と関係がないといわれる武装勢力・テロ組織などによる攻撃で、ウクライナでのいわゆる「グリーンマン」を念頭に置いたものです。

報告書では、ロシアのこうした「新しい戦争」は今年のウクライナが初めてではなく、2007年のエストニアへのサイバー攻撃、2008年のグルジアへの攻撃も含まれるとしています。

ちなみにこの2007年のエストニアへのサイバー攻撃について、僕は当時バルトを見ていなかったのでリアルタイムで知らなかったのですが、当時エストニアにおいて第二次大戦時のソ連兵士慰霊碑撤去に関係した、ロシアからと思われる大規模なサイバー攻撃を指すようです。


ちなみに、ロシアのこの新しい戦争について以前からいくつかの文献が提示されていたと書かれており、その中に前のエントリで紹介したMark Galeottiの「ゲラシモフ・ドクトリン」があげられています。


この報告書では、現在のNATOの東欧北部における通常戦力の欠陥についても指摘しつつ、それと平行してこのambiguous warefreに対するNATOの準備の無さを指摘しそれについての提言を行っています。

しかし、この報告書で提示されている提言はまだまだ頼りないものです。

とにかくロシアの動きを監視し・正確に分析し未然に食い止めること以外具体的なものは書かれていません。

これについては今年9月に英国で開かれるNATOのウェールズサミットにおいて具体的なことが討議されドクトリンとしてまとめられることが予想されていますので、このあたりはまだ仕方がないかなと思います。


しかし、僕が虚をつかれたと思ったのは、NATO憲章とも言えるワシントン条約の、加盟国の集団防衛義務を定める第5条についての懸念です。

実のところ、僕は例えばバルト三国がクリミアやウクライナ東部のようなambiguous warefareを仕掛けられた場合、NATOは即座に5条対応をすると思いこんでいました。

しかし、武力によらず、またロシア本国があれはうちとは関係がないと白を切った場合、NATOとしては5条を発動することが困難になるのです。

この点についてこの提言では、5条対応の基本的解釈を変更し、武力によらないambiguous warfare(たとえばサイバーアタックレベルでも)をしかけられたばあいでも5条を発動できるようにすべきだとしています。


それにしても、この提言のバルト三国への過度の集中ぶりにはちと懸念が生じます。

確かにロシア系住民をかかえ住民同士の宥和がなっていないエストニア、ラトヴィアではロシア系に対するロシア政府の扇動工作が懸念されえますし、リトアニアもロシア本国とカリーニングラードとを結ぶ回廊の上にあり、ロシアの脅威をもっとも受けやすい位置にあります。

このラトヴィア、エストニアにおけるロシア系住民の問題については、後に詳しくエントリで説明します。

しかし、それ以外にも脅威を懸念すべき場所があることは、僕が書いた一つ前のエントリで指摘した通りです。


ともあれ、本文中にあるようにウェールズサミットで具体的なドクトリン作成に入るようですが、ambiguous warfareへの対処について、事前に阻止することだけでなく、実際に「攻撃」がなされた場合における対応についても検討してもらいたいものです。

情報戦・心理戦は社会全体のレベルでの準備・対応が必要となります。これは平時においてもバルト三国など攻撃の対象となる懸念のある「前線」の諸国の社会に極度の重圧を強いるものになるかもしれません。

その上、例えば、クリミアやウクライナ東部へ侵攻してきた「グリーンマン」の撃退には成功したとします。

しかし、ロシア政府が扇動し戦闘に参加したロシア系住民は事実上現地のネイティヴであり、ロシア本国に難民として流入するのでなければその国にとどまることになります。

その場合NATOはどうするのか。戦後「戦犯」を追及する段階になり、ロシア系住民が抵抗を試みたらどう対応するのか。

そもそも戦争中は彼らの一部は武装してロシア軍に合流する可能性が高く、その場合他の戦闘に参加していないロシア系とどう区別するのか。彼らは戦闘には参加していなくても何らかの形でロシア軍を支援する可能性も高いです。


ロシアがバルト三国などで今後ambiguous warfareを行った場合、なんとかしてNATOが戦争の決をつけえたとしても、戦後の住民相互の感情は最悪となり、その後長期にわたり民族紛争の巣となる可能性もあります。


はぁ、しかし、やっかいなことを始めてくれたものです。

ロシア軍とベラルーシ軍合同の大規模演習Zapad2013が去年行われましたが、これは通常戦力のみであり、これはambiguous warfareを今後行うための偽装ではなかったのかな、と思うのは、うがち過ぎでしょうか。

もしそうであれば、NATOがその後東欧北部、バルト地域で行ったやはり通常戦力による大規模演習であるSteadfast Jazzが道化のように思えてきますね。


今回はこんなところでしょうか。

До побачення!
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

belaoluja

Author:belaoluja
こちらは南東欧戦略環境分析局blog http://crnogorac.blog117.fc2.com/ から萌え要素を抜いたものになります。

文責は同じ @crnaoluja (twitter) です。

最新記事
リンク
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。